働く女性にとって悩みのタネになりがちな保活問題*。とくにフリーランス・個人事業主として働くママにとって「出産後に子どもを保育園に預けられるのか」は産後の大きな問題のひとつです。(*保活:子どもを保育園に入れるために保護者が行う活動)
フリーランス・個人事業主のママは、産休・育休制度の利用ができず、育児休業給付金を受け取れません。そのため「早めに保育園に預けて働きたい」と考える方もいらっしゃるでしょう。
しかし、保育園の待機児童問題が解消されていない地域もまだ多くあります。激戦区といわれる地域では、出産前から保活をしなければならないという声も耳にします。また、フリーランス・個人事業主は保活に不利とのうわさも…。
そこで、実際にフリーランス・個人事業主として働く私が、保活を始める時期やスムーズに進める手順をご紹介します。
フリーランス・個人事業主ママが保活を成功させるカギ
フリーランス・個人事業主として働くママにとって、保活の一番のカギは「なるべく早く活動を始めること」です。
会社員として働いていると、出産時には産休・育休制度を利用できます。産休は出産予定日の6週間前と出産後8週間取得できる休業制度で、育休は産休後子どもが1歳になるまで取得できる休業制度です。
産休・育休制度を使って休業している間に、保育園について調べるママも多いですが、フリーランス・個人事業主として働くママは産休・育休制度対象外のため、その時間がありません。さらに、出産間近まで働く方や、出産後保育園に預けられる最低月齢になったらすぐにでも保育園に預けたいと思う方もいるでしょう。
保活をスムーズに進めるために、妊娠していることがわかったら、住んでいる地域の待機児童や預けられる最低月齢などを少しずつ調べ始めることをおすすめします。
私は保活を始めるのが遅く、申込期限間際にようやく見学に行ったり、必要な書類を集め始めたりとバタバタしてしまいました。結果的に今の園に不満はありませんが、もっと早くから準備していたら、たくさんの保育園を比較検討できて、より納得感や満足感があったと思います。また、あるママ友さんは、早くから行動していたおかげで「思ってたイメージと違う」と気づき、別の園を検討することができたそうです。このような経験から「早く準備することが成功のカギ!」といえます。
保育園入園に不利?フリーランス・個人事業主がそう言われる理由
早めの保活が成功へのカギですが、なぜそうなのかを説明するには、フリーランス・個人事業主が保育園入園に不利と言われている原因を知ることが大切です。
フリーランス・個人事業主のママが保育園入園に不利といわれる理由は、主に2つあります。認可保育園と無認可保育園の違いと、認可保育園に必要な「ポイント」です。
認可保育園と無認可保育園の違い
自治体によって独自の制度を取り入れているところもありますが、保育園は大きく分類すると「認可」と「認可外」の2つに分かれます。認可保育園は国が定めた基準を満たして認可された保育施設で、認可外保育園は国の認可を受けていない保育施設です。
また認可保育園は、自治体からの保育料補助を受けることができ、所得に応じて保育料が決まります。対する認可外保育園は、自治体からの保育料補助はなく、保育料は各園で決定します。
国の定めを満たしていなかったり、保育料の補助が受けられないなど、認可外保育園に不安を感じるママもいるかもしれません。しかし、認可外保育園は休日保育や夜間保育などにも柔軟に対応してもらえる園が多く、働くママにとってはありがたい一面も。
とはいえ、やはり保育料の補助が受けられるのはありがたいものです。そのため認可保育園への入園を希望するママが多いのも事実。
そして、認可保育園に入園するためには「ポイント」が必要となってくるのです。
認可保育園に必要なポイントとは
認可保育園の入園は、家庭の状況をポイント化して、そのポイントで優先順位が決定します。優先順位が高いものから希望の園に入園できるシステムです。
ポイントは自治体によって異なりますが、主に母親+父親の基準点数から、その他条件が調整点数として加算された合計によって出されます。
たとえば、以下は東京都世田谷区の令和6年度の保育入所基準指数表を参考にして、作成した表です。確認してみましょう。
週に働く日数、時間によって最大35ポイントもの差があります。しかし、世田谷区の指数表によると、外勤であっても自営業であってもポイントに違いはないことがわかります。
フルタイムで働いているのであれば、フリーランス・個人事業主のママが保育園入園に不利ではないのです。
表:保育の利用基準をもとにした指数(例)
保護者の状況 | 利用 基準 指数 | ||
類型 | 細目 | ||
就労 | 外 勤 (在宅勤務含む) 自 営 (業務委託契約含む) | 週5以上勤務し、かつ、週40時間以上の就労を常態 | 50 |
週5以上勤務し、かつ、週37時間以上の就労を常態 | 45 | ||
週4以上勤務し、かつ、週35時間以上の就労を常態 | 40 | ||
週4以上勤務し、かつ、週30時間以上の就労を常態 | 35 | ||
週3以上勤務し、かつ、週25時間以上の就労を常態 | 30 | ||
週3以上勤務し、かつ、週20時間以上の就労を常態 | 25 | ||
週3以上勤務し、かつ、週16時間以上の就労を常態 | 20 | ||
月48時間以上の就労を常態 | 15 |
自治体によってポイントは大きく異なる
東京都世田谷区の場合は、外勤であっても自営業であっても働く日数・時間が同じであればポイントに差がないことがわかりました。
しかし、これは全国で共通ではありません。自治体ごとに指数表が作成されており、多くの自治体では毎年見直されています。そのため、自治体によっては外勤と自営業でポイントが異なる場合があり、去年と今年では加算基準が異なる場合もあります。
そのため、隣の市に住むフリーランスの友達の子は大丈夫だったから、上の子のときは大丈夫だったからなどと思わずに、毎年調べ直すことをおすすめします。
また、多くの自治体では保育園の申込に「就労証明書」が必要です。フリーランス・自営業の場合は自分で作成したり、その代わりに「確定申告の控え」や「税務署への開業届の写し」「事業内容がわかるもの」などを提出したりします。
提出書類は自治体によって異なるため、必要書類を事前に確認し、書類が用意できるよう開業届を提出する、確定申告を行う、日ごろから帳簿をつけておくなどの作業も忘れないようにしましょう。
保活をスムーズに進めるには
では、実際に私が保活をした経験をもとに、スムーズに進めるための手順についてご紹介します。
1.役所に直接または電話で問い合わせる
保活をスムーズまずは住んでいる自治体の役所に保育園について、直接または電話で問い合わせてみましょう。
「令和(西暦)○年●月に出産(予定)で、▲月ごろに保育園の入園を考えています」というように子どもの年齢(出産予定日)や、いつごろ入園させたいのかを伝えるとスムーズです。
そこで、自宅(会社)周辺の保育園の空き状況や、過去の応募状況について質問してみましょう。フリーランス・個人事業主として働くママは、ポイントの確認もお忘れなく。
最低限聞いておくべきことは、主に以下のとおり。
- 自宅(会社)周辺の保育園の空き状況
- 過去の応募状況
- 会社員とフリーランス・個人事業主のポイント数の違い
- 保育園申込に必要な書類
事前に聞きたいことをメモしておくと、忘れることなく確認できます。
また、担当者の方の名前も伺っておくことをおすすめします。今後役所とやり取りする際にいちから説明する手間が省けるためです。
そして、この時点で準備ができる保育園申込に必要な書類の準備を進めましょう。
2.保育園の見学に行く
役所に問い合わせをして、保育園をいくつか絞ったら、見学に行きます。突然訪れても対応してもらえないことが多いため、事前に予約してから訪れましょう。
保育園の見学は任意で行うものですが、ホームページやパンフレットの情報だけでは確認できないことも多いため、実際に足を運んでみることをおすすめします。保育園によって設備、毎日の持ち物やイベントの数なども大きく異なります。
また、実際に園長先生や保育士さんと話すことで、園の雰囲気もつかめます。
私は、子どもがアレルギー持ちなこともあって、アレルギーの対応はしてもらえるのかを見学時に確認しました。見学時に聞いておきたいことも、事前にメモしておくことをおすすめします。
3.申し込みをする
入園したいと思う保育園を見つけたら、実際に申し込みましょう。スケジュールや期限は各自治体によって異なるため、必ず確認をしてから申し込んでください。
とにかく早く保育園に預けたいと思って、入園希望施設の数をいっぱい記入して提出する方もいますが、内定した場合は通わなければなりません。
そのため、毎日送り迎えができる場所にあるか確認したうえで申し込みましょう。子どもの登園はスムーズに行かないことも多いため、子どもが歩きたくないといった場合や、雨や強風の日などさまざまなケースを想定しておく必要があります。
フリーランス・個人事業主が保育園入園を勝ち取るために
フリーランス・個人事業主として働くママが不利なのではなく、最近は共働きの家庭も多いため、全体的に保育園の入園が難しくなっています。
スタイルアクト株式会社の調べでは、東京都の0歳児認可保育園に入りにくい行政区ランキングの1位は江戸川区で倍率7.85でした。
高い倍率のなかから入園を勝ち取るためのカギは、やはり早くから保活を始めることです。保育園に入れることを検討した時点で、役所に保育園の空き状況を確認したり、ポイント数を確認したりして、周辺の保育園事情を知っておきましょう。
また、保育園の申込に必要な書類には、揃えるまでに時間がかかってしまうものもあります。前年度の確定申告をしていないと「確定申告の控え」はありませんし、確定申告するには帳簿の記録や領収書の整理も必要なため、一朝一夕では終わりません。なので、保育園に入れることを検討した時点から、書類の準備も始めておきましょう。
保育園の空き状況を確認したり、ポイント数を確認したり準備をするなかで、保育園の入園が難しそうだと感じる場合には、0歳児の4月入園も検討してみるのもひとつの手です。
一般的に0歳児の4月は他の年齢に比べて、入園しやすいとされています。なぜなら、進級園児で定員が埋まることなく、入園する時点で定員分の空きがあるからです。
ただし、0歳児の4月入園を希望する場合も早めの保活が必須です。4月入園の場合、前年の9月頃から受付している自治体があります。タイミングによっては出産前に申し込まなければならないためご注意ください。
保活は、ただ保育園を選び、申し込みするだけではありません。住んでいる地域の保育園事情をリサーチしたり、必要となる書類を準備したりすることなども保活のひとつです。納得のいく保育園選びのためにも、保育園入園を勝ち取るためにも、少しでも早く保活を始めましょう。